8月5日、プログラミング教育の情報サイト「こどものミライ」リニューアルオープンを記念し、東京のD2Cホールで「SPRK+」を使ったサマースクールが開催されました。
「こどものミライ」サマースクールのテーマは、「Sphero SPRK+を授業で活用しよう!」。午前と午後の二部構成で行われ、第一部はSPRK+を使った授業のアイデアを講義と実践で学ぶ先生向けの特別講座、第二部は子ども向けのワークショップで、第一部に参加した先生がメンターとなり、学んだことを実践する場にもなっていました。
レポートでは、サマースクールの様子を写真や動画とともにお伝えすると共に、SPRK+を授業に活用するノウハウを紹介していきます。
「アンプラグドプログラミング」から「フィジカルプログラミング」へ
今回のサマースクールで講師を務めるのは、情報通信総合研究所特別研究員の平井聡一郎先生です。日本各地でSPRK+を活用した実践授業を数多く行ってきた平井先生が、これまでに蓄積したノウハウやTIPSを先生たちへ伝授してくれました。
サマースクールに参加したのは、東京や関東近郊の小学校、養護学校などの先生など計8人。ほとんどの先生が、すでにSPRK+を授業やクラブ活動に取り入れるなどして体験をしていました。
特別講座では、まず新学習指導要領に明記されたプログラミング教育の概要、そして実際の学校でどのようにプログラミング学習を行えばよいかという基本を、平井先生が解説しました。
学校で取り入れられているプログラミング学習のひとつに、「アンプラグドプログラミング」があります。パソコンやタブレットを使わなくてもプログラミングの概念を学ぶことができるもので、低学年から手軽に行え、比較的導入のハードルが低いのが特徴です。
小学校でプログラミング教育を行う場合、最初に「アンプラグド」で基本の概念を学んだのち、Scratchなどに代表される「ブロックプログラミング」、さらにSPRK+などを使った「フィジカルプログラミング」へと移行していくといく方法があります。こうした手順を踏むことで、プログラミング学習の知識や経験が少ない先生でも、比較的スムーズにプログラミング学習を授業に取り入れることが可能です。ここではLEGOのブロックを使った事例で体験しました。まずお互いが同じ種類のブロックを持ちます。一方がある形を組み上げた後、相手を見ずに言葉だけで組み立て方を指示します。手順を考えること、指示の仕方を考えることがプログラミング的思考に繋がります。
算数の図形の問題をSPRK+で学ぶ
では、実際にどんな教科や単元でSPRK+を活用できるか、具体的な例を紹介していきます。
最初に行われたのは算数の実践例です。文部科学省が2018年3月に公開した「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」には、「各教科等の目標・内容を踏まえた指導の考え方」が紹介されています。その中のひとつが、5年生で学ぶ算数の「B図形」です。手引には、「A-① プログラミングを通して、正多角形の意味を基に正多角形をかく場面」として、プログラミングの活用例が挙げられています。
講座では、実際に正方形、正五角形、正六角形といった正多角形のプログラミングに挑戦し、「正多角形の角の大きさと曲がる角度との関係」を考えていきました。分度器と定規を使って実際に手で描く場合、正多角形の角が増えるほど、角度を精密に測り辺の長さを正確に書かないと正多角形になりませんが、プログラミングを組むことにより、正多角形を簡単かつ正確に書くことが可能です。しかし、ここでのねらいは、多角形を描くプログラムを作ることではありません。プログラミングすることを通して、多角形の性質を理解することにあります。一部の条件を変えることで、様々な多角形が描けることを体験することで、多角形の角度、辺の数を理解できるようになるのです。
SPRK+では、専用アプリ「Sphero Edu」の「ブロックプログラミング」を使って角度と辺の長さを考察し、設計していくことで、色々な正多角形を書くことを目指しつつ、機械を活用したデジタルならではのメリットを実感しました。
図工で実践!低学年からできる「スフィロアート」
次に、図工の授業の一例として、SPRK+の転がる動きを利用し、絵の具をつけた白い紙の上でSPRK+を転がす「スフィロアート」が紹介されました。
SPRK+は完全防水のため、そのまま絵の具をつけても本体へ支障はありません。今回の講座では、大きな白い紙を床に広げ、周囲を四角く囲ったキャンバスを用意しました。赤や黄、青などの複数の色の絵の具を皿に入れ、SPRK+全体に絵の具をつけます。次に、紙の上でSPRK+を様々な方向に転がすことで、軌跡がそのまま線となり作品になります。今回は「ドライブモード」で直感的に操作して絵を描いていきましたが、算数と同様にプログラミングして好きな図形を描きだすことも可能です。学年にあわせて難易度を変えていくのもよいでしょう。
また、個人で一枚の絵を仕上げるだけでなく、グループでひとつの作品を仕上げる「協働作業」にも向いています。
実践講座では、先生たちが実際に絵の具のついたSPRK+を操作し、白い紙にどんな軌跡を残すのかを試しました。速度や絵の具の量によって線の太さなども変わってくるため、どのような条件で行えばスムーズに作品作りができるのかも話し合っていました。
理科で様々な動きをシミュレーションさせる
SPRK+の活用はこれだけではありません。講座では、特別なシートを使った授業実践例も紹介されました。
そのひとつが、人体の図が描かれたシートの活用です。SPRK+を血液と見立て、体の中をどう血液が巡っていくかを考えてプログラミングしていきます。算数の図形や、図工のスフィロアートと比べると、かなり高度な内容になりますが、中学校・高校の生物などでも応用できる興味深いものになっています。
すべての講座が終わると、いよいよ午後の第二部へ向けての準備です。第一部に参加した先生全員が今度は指導する側のメンターとなり、ワークショップに参加した子ども達のサポートを行います。
平井先生が参加者の先生を「算数」「理科」「図工」の3グループに振り分けをし、先生方はそれぞれの担当についての打ち合わせを行いました。
後編では、第二部のワークショップでの子ども達が学ぶ様子、先生方がメンターを行う姿などを通して、指導のコツなどをご紹介していきます。